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1999年度(平成11年度) | 資料集 | 大分県産業科学技術センター

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(1)

平成11年度 研究報告 大分県産業科学技術センター

人の腕の運動機能特性把握と産業への応用

後藤和弘

機械電子部

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Mechani cs &El ect TOni cs Di vi s i on

1.はじめに

通常,人が機械を操作する場合には,人が機械の使い

方を習得することが当然のように思われている.そして

その機械や道具をいかにうまくつかいこなせるかが職人

と呼ばれる条件でもあった.このことを異なる側面から

見ると,機械のもつ特性を人がどれだけ把握し,それに

応じて自らの身体の運動特性を調節できるか,であると

いえる.一般的に熟練者は必要最小限の力で作業を行う

ことができ,不要な操作は行わないことからも身体の運

動特性を巧みに調節できていると考えられる.

将来的な高齢化社会を考えると,作業現場や医療福祉

現場におけるロボットや自動機械による支援は今後需要

が高まっていくと予想され,人とロボットが協調して作

業を行うようになると考えられる.そして,このような

場面では人が機械の特性にあわせるのではなく,機械が

人の運動特性i こ応じて自らの動きを調節できることが要

求される.

人と協調するロボットについては,以前から多くの研

究が行われている.たとえば】Kos ugeら1:は人とロボッ

トが協調して物体を運ぶなどの相互作用を伴なうメカニ

カルシステムを提案している.医療福祉分野では,藤江2、

は,人を「さりげなく」支援するという考え方のもとで

歩行介助システムなどを開発している.また,榊らはリ

ハビリテーションにおける訓練機器としてj 関節癒着防

止ヤ関節軟骨の治癒促進の目的で使用される関節可動域

訓練装置を開発しているい5、

一方,機械が人の特性に応じて自らの動きを調節する

には,人の運動制御特性を知る必要がある.人の姿勢や

運動制御に関しては機械的インピーダンスの計測が報告

されていてト腕や手先,指,肘関節,足関節など,さま ざまな部位について研究が行われている.Ts uJ i ら6は

手先位置干上肢の姿勢などによって手先インピーダンス

特性が変化することを示している.Gomi らT、は2関節で

の平面内の運動中の手先インピーダンスを計測し,他の

研究者の結果と比較している.下肢についてf ま,佐藤らぎ\

が直立姿勢における足関節の粘弾性!伸張反射ユ 姿勢削

㈲系乃機能分担について検討している.このような運動

計濃」運動制御機構に関ナる研究成果は1t コポット制御

などニウニ学応用ばかりでなく.動力義手やリハビリなと

の医用応用などに役立つと考えられている.たとえば,

辻ら9)は人の手先インピーダンス調節能力を訓練するト

レーニング法を提案し,リハビリテーション への応用可

能性について検討している.

これらの研究では,肘や足関節などの単関節運動,ま

たは水平面や垂直面内での多関節運動について解析され

ているが,多関節運動に関する解析はその困難さからあ

まり報告されていない10二\そこで本研究では,3次元の

運動領域での多関節運動における手先インピーダンスの

解析手法について検討するとともに,リハビリ分野等産

業への応用について考察する,

2.方法

2.1手先インピーダンスの計測

手先インピーダンスとは,筋の活動度によって変化す

る筋の粘弾性特性を手先における仮想的なバネやダンパ,

質量として表す.筋の活動度が高ければ腕は堅くなり,

低ければ柔らかくなる。人はこのような特性を積極的に

利用し,道具などの物体や周囲環境との相互作用を伴う

作業を巧みに実現していると考えられる.

手先インピーダンスの計測については,Ⅳhs s a−Ⅰval dl

ら11)が姿勢維持中の被験者の手先に振幅1cm程度の微

小変位を与え,ニのときに手先に発生する力を計測する

ことで,インピーーダンスの静的な成分であるバネ要素を

推定している.また,Dol anら12二\Ts u、j i ら∈ノはバネ要

素である弾性だけでなく,粘性,慣性についても同時に

計測を行い,それらの特性について詳細に調べている、

これらはいずれモ)碗の姿勢を維持した状態での計測であ

るが,Gomi ら7ノは2関節での平面内の運動中の手先イン

ピーダンスを計測し, 姿勢を維持した状態(静止時)よ

りも小さくなることを示した.

これら手先インピーダンス特性に関する研究では,手

先に微小な変位を与え,そのときに発生する手先力との

対応を求めることで特性を計測している.そこで ,本研

究においても同様の手法を用いることにする.

2.2手先インピーダンスのモデル化

人がある姿勢を維持している場合に外部から強制的に

手先を変位させた場合,姿勢によって決定される手先イ

ンピーダンスによって手先に反力が発生すると考えられ

(2)

平成11年度 研究報告 大分県産業科学技術センター

る.このときの手先動特性はインピーダンスモデルを用

いて以下のように表オことができる6:.

.W

似ズ作ノ十β 作ノズ砂十∬作ノげ砂一考似ノニ・勒

(1)

ここでト斬りは手先の位置ベクトル∫ 鞘ノは手先カベクト

ル,〟㈲β 似g作ノは手先インピーダンスの成分行列で,

それぞれ手先の慣性(質量),粘性(ダンパ要素),弾

性(バネ要素)をあらわす.変位を与える微小時間のあ

いだにはこれらは変化しないと仮定すると,(1)式は次の

ように近似表現できる.

」恍子方弼ナβ瑚ノ十抑ノ=一郎Yり (2)

鞘ノ′ 嘩ノは,それぞれ微小変位を与える直前からの手

先位置と発生力の変化分を表し,実験によりこれらを計

測すれば手先インピーダンスを推定できる.

2.3計測システム

開発した計測システムの構成をFi g.1に示す.本研究

でのシステムは,手先を変位させるためのパラレルリン

クマニピュレータ(以下,PLMと表す),手先力を計測

する6軸カセンサ,制御計測用の計算機で構成される.

このPLMは3つの腕(リンク)で1つの手先を支持する

機構になっており、それぞれのリンクを各々1つのモー

タで琴区勤し,全体として3自由度を有する.すなわち,

3次元領域内での並進移動のみが可能である.PLMは一

般的に可動領域は狭いものの,高剛性があり,高速な移

動が可能,高精度な位置決めが可能であるといった特長

があるので!本研究のように短時間のあいだに微小な変

位を与える用途には適している.また,手先の移動方向

による動特性の差が無く,等方性の特長をもつことから3

次元領域での移動にも適しているといえる、PLMの手先

には)6軸カセンサ(株式会社ニッタ製)を取りつけ5

変位時の手先力を計測する.Fi g.2に外観鼠を示す.

3.システムの評価実験

3,1実験方法

従来の研究で∼ま, 手先インピーダンスの計測結果を比

較すると,特性狩傾向は似ているものの、数値的にはか

なり異なった値となっている.この原因は微小変位の与

え方や推定に用いるデータの時間区間など,実験条件や

計測条件の違いにあると考えられ,それぞれの結果を直

接に比較することはできなかった.このためTs uj i ら己:は

バネ(バネ定数)や重り(質量)など既知の物理量につ

いて予備実験を行い,開発した計測方法を検証している.

そこで, システムを評価するための予備実験としてカ

センサと環境とじ′ 〕あいだに機械バネを取りつけ,PLMの 手先を変位させた場合の発生力を計測した.

バネ定数の異なる4種類のバネを用意し,これらにつ

いて,①振幅が1(〕mm程度の手先変位を与え,定常状態

の測定値から静的な特性を計測した.また〕②振幅4I l 11n

程度の手先変位を与え,動的な変化におけるシステムの

性能を評価した.なお,これらの振幅については他の研

究者の事例を参考に設定した, 3.2実験結果

Fi g.3に手先発生力の計測結果の一例を示す.PLMの

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D

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∧∪

︹︶

︵もさ︻︹壊≠

6軸カセンサ

Fl 巨1計測システムの構成

二 「= ̄

_… くL肌山 20 ■ ..,..」⊥m▲ 一,㌧≠】 」 ♪

≡時間(secニ

(al バイアス除去前

〇 3

ーー﹁[

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︹も空︹卜︰試‖什

仕 5 15 2() Z5

時 芦笥(s虐C

(b)バイアス除去後 FFg.3 手先力しつ計測例

Fユ昌2 計測システムの外観

(3)

平成=年度 研究報告 大分県産業科学技術センター

手先をⅩ軸負方向に10mm変位させ,しばらく静止させ

た後に元の位置に戻し,このときに機械バネによる発生

力をカセンサで計測した.カセンサにはPLMを変位させ

る前からある程度のバイアスカがかかっているが,イン

ピーダンス特性を計測するには手先を変位させた場合に

おける微小変化分を必要とするので,変位前のバイアス

成分を除去しなければならない.Fl g.3(a)はバイアス分を

除去する軋Fl g.3(b)は/(イアス分を除去した後の手先発

生力をそれぞれあらわしている.図から,手先変位後の

力の変化分が得られていることが分かる.

4種類の機械バネについて同様の測定を行った結果を

Fl g.4に示す.手先発生力の定常部分から機械バネのバネ

定数を求めると,それぞれ283,148,300,30(N

/m

)と

なり,あらかじめ測定していた値とほぼ一致した結果が

得られた.

Fl g.5にはPLMの手先を変位させた後,すぐに元の位

置に戻した場合の手先位置の計測結果を示している.本

研究では微小変位を印加する短時間のあいだには手先イ

ンピーダンスが変化しないと仮定しているため,変位の

印加方法が推定結果に与える影響は大きい.Ts uj i らら)が

0.3 0i 4

時間(s ec)

F≧g.5手先位置の計測例

使用した変位パターンでは,目標手先位置までの立ち上

がり時間は200nl S程度であった.今回の評価実験から,

本システムのPLM

では4I l l l Tl の目標位置に対しおよそ

100ms での変位が可能であることを確認できた.この結

果より,手先インピーダンスを計測するのに十分な動作

性能を有すると考えられる.

4.産業への応用可能性について

インピーダンスの概念は,ロボットの制御には既に取

り入れられていて,玉子を割らずに柔らかく握ることの

できるロボットハンドやリハビリ目的の下肢訓練装置

3∴4)などにインピーダンス制御が用いられている.

一方,人の運動機能特性を機械的なインピーダンスと

して計測する研究はこれまでにも報告されているが,そ

の多くは単関節連動や,ある平面内に限定された多関節

運動など簡単な運動であった.しかし,最近になって人

のインピーダンス特性を実際に応用しようとする研究が

報告されてきた.川村らはは合気道の力学解析として,

相手の胴体に効果的に力を与えるためには自分の身体全

体の機械的インピーダンスをどこまで増加できるかとい

う問題点を提示し基礎実験を行った。辻ら1ヰノは手先イン

ピーダンス・トレーニング装置のプロトタイプを開発し,

スポーツートレーーニングへの応用可能性について紹介す

るとともに,プロ野球選手など熟練者の運動中のインピ

ーダンスを計測し、そのインピーダンスを目標として訓

練することで,高度な技能が必要な作業を効率良く実現

できる可能性があることを提案している.また,山田ら

潮は生産現場における自動車組立て作業について,作業

者が身体のもつ機械インピーダンスを巧みに調整するこ

とで作業を実現していると考え,この調整の仕方こそが”

スキル” であるとしている.そして「スキルアシスト」

と名づけた作業支援機器によって,加齢した作業者のイ

ンピーダンス調整能力の不足分を補うように制御するこ

とを試みている.

このようなスポーツや生産現場の作業などは空間内で

身体を動かすため1本研究で示したように多関節運動に

おける空間的なインピーダンス特性の計測結果を適用で

きる可能性があると考える.また,本間ら1引が開発した

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時 閻、Sラ⊂、

〈d)バネ4 F童g.4機械バネによる手先刀

(4)

平成11年度 研究報告 大分県産業科学技術センター

ワイヤ型上肢動作補助装置のように身体を外部から動か

す力が作用する場合についても,あらかじめその部位の

インピーダンス特性を把握できれば,身体に無理な力を

与えることなく外部から動かすことができ,安全に操作

できる.

以上のように,スポーツ分野,工場等の生産現場,福

祉分野等,人との接触を伴ない,相互作用的な力を必要

とする場面への応用可能性がある.

5.まとめ

本研究では,人の腕の運動機能特性を計測することを

目標として,3次元の運動領域での多関節運動における

手先インピーダンス計測システムの開発を試みた.そし

て, システムの評価実験として物理的な機械バネについ

て計測を行い,実際に人の手先インピーダンス特性を計

測できる可能性があることを確認した.

また,人の運動制御特性に関する従来の研究を調査し, 産業への応用可能性について検討した.

今後は,実際に人の手先インピーダンスを計測し,具

体的な実用化についても検討していきたいと考えている.

近年,「人にやさしい」をキーワードとする研究や製

品開発が様々な分野で普及しているが,技術者の立場か

らは技術シーズありきでの開発になり】実際に使用する

と使い勝手が良くないなどの問題が判明することも少な

くないのではないだろうか.さまざまな分野において「人

にやさしいロボテイクス」が叫ばれる状況であるが,こ

れを実現するには,人の特性を把握して機器を柔軟に制

御する必要性があるとともに,なによりも現場の声を十

分に聞くことが重要ではないかと感じる.

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参照

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